今日もプリエから:暗闇から手を伸ばせ
24歳になる直前、みんなが当たり前にできていることが全くできなくなった。
普通に求められている仕事ができない。最低限さえもできない。中身のあることが何一つ話せない。自分には、何もかも足りない。
世の中が“普通”とすることができない。「優等生的生き方」に潜在的にもしがみついていた自分には、想像以上のダメージだった。
すごく焦っていたし、いくら仲良い友人だとしても誰かといるだけでものすごく辛いこともあった。
……今思えば別にそれほど気に病むことでもないと思うし、自分なりに少しずつ受け入れていく時間が必要なだけだった。
そんな中で、迎えた舞台。
舞台袖で、出番を待つ。
板付きじゃなくて、曲のある部分で袖から出ていく作品。曲の盛り上がりが少なくて、同じフレーズの繰り返しを自分で数えて出る。舞台の照明は暗めの設定で、他の人を見て頼りにすることはできない。
まるで暗闇に飛び込んでいくみたいな感覚。孤独。
それに私の後ろには2人のダンサーがいて、私が先頭で出ていかなくちゃいけない。
もし、私が出遅れたら……。
基本的に舞台の前は緊張しない。今まで何十回と立ってきて慣れているし。
でも、あの時だけは……。いろんなプレッシャーが自分にのしかかる。
「 “いつも頑張らずにやってきたこと”が、今のわたしにはできるんだろうか。」
「何にもできないのに…」
「袖から出るだけでこんなに気持ちになるなんて…」
舞台は非日常のようで、そこに立つ自分はいつもと変わらない。
何も知らなかった子供の頃とは違って、いろんな恐れを知った大人だからこそ感じた怖さだった。
舞台は、楽しさも、緊張も、試練も与えてくれる。
(タイトルはもちろん、小沢健二さまのあの曲からの引用です。)