守ってきたもの
お稽古場にある階段の上に登って、踊っている人を眺めるのが好きだ。まるでムササビのような視点で、ただ一緒に踊る仲間のことを、みんなのことを考えている。
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ここは、とある静かな街にもう40年くらいあるバレエ教室の、社会人クラス。私たちはプロでもないし、踊ることでお金をもらっているわけでもないけれど、気づいたら踊り続けて20年以上が平気で経っているみたいだ。
みんなに共通するのは、人生でいろいろなことがあって、他にやることも沢山あるけれど、「踊ることが好きで、その時間を守り抜いてきた」ことなのかもしれない。
Iちゃんは、忙しい機関で働いている。昔から思い描いてきた理想で、とてもカッコいい。でも、働き方の話を聞くだけで、私が倒れそうになるくらいだ。そんな中で、お稽古場に来るのはいつもギリギリだけれど、それでもちゃんと来る。遅れても、絶対にちゃんと来てくれる。多くは語らないけど、意志があって踊り続けているのが分かる。
Sさんはレッスンが終わると足早にスーツに着替えて、お稽古場を後にする。スラッとしてて、スタイルが良くて、スーツも相まって、まさに颯爽とした姿で。たまにある土曜出勤。大変だなーと思うけれど、ここでずっと踊り続けている彼女は、きっと小さな女の子から見ても、憧れそのもの。
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ここまでくると、「なんとなく」で踊り続けてきた人はいないのだろうなと思う。
辞めるタイミングはたくさんあったのだろうけれど、どこかで「それでも辞めない」「やっぱり踊りたい」と思って、バレエを守ってきたから。
すぐに分かりやすく結果が出るものばかりが目立つけれど、長く続けないと分からないものって、絶対にある。それがどれだけ、大変なことなのか。
<今日もプリエから 20>でした。
▼前回の「今日もプリエから」
20年以上続けてきたバレエのお稽古について、日記を綴ることにしました(エッセイスト・森下典子さんの『好日日記』に憧れて)。バレエについて書くことは、人生について書くこと。