“びわ”のような恋愛/吉本ばなな『すばらしい日々』
必要以上に、自分を大きく見せてしまう。
ちょっと無理して頑張らないとできないことでも、つい「できます」と言ってしまったり。相手に好かれたいから、別に興味のないことにも「好き」と言ってしまったり。
それが必要な時だってもちろんあるけれど、常にその態度でいると、疲れてしまう。
そんなことがあるたびに思い出すのは、“びわ”のこと。吉本ばななさんのエッセイ『すばらしい日々』にある、“びわ”の記憶。
この世で起こる、当たり前だけど不思議なお話。
ただ、もらったびわを食べて、種をその辺に捨てたら、たくさんの葉を繁らせて育って、自然の恵をくれた、ということ。
びわが育つのに、何の力みもいらなかった。「いつのまにかそこにあった」とか「自然とそうなった」とか「負荷もなく、そのままでいた」とか、誰も無理せずに、流れるように物事が進むことがこの世には存在するのだ。
連想されるのは、やっぱり恋愛のこと。「頑張る」とかいう言葉とは縁遠くて、変なエネルギーは何もいらない恋愛も、あるのだと思う。
どちらかが何気なくした発言が気になって、どちらかが自然とメッセージを送って、気づいたらご飯に行ってみたい気持ちになって、自然と仲良くなっていて、一緒にいる時間が長くなっていって、いつのまにか手を繋ぐようになっている。
淀みを感じることなく、流れに沿っていくような恋愛。すとんすとん、と進んでいく自然体な関係のこと。当たり前すぎて見失ってしまうかもしれないけど、そういうものにこそ、感謝の目を向けていたい。
ほかにも、親とのこと、ペットとのこと、旅のこと……など、小説家であるばななさんの世の中への視点が垣間見える、エッセイです。
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